オススメ度 |
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古典の勉強のため読んだときには、「けり」だの「ざり」の解釈に気をとられて、筋を追う余裕がなかった。
しかしこの本は原文なしの現代訳本。
雑念なしに楽しむことに集中できるのが嬉しい。
訳者は日本有数の西鶴研究者だそうだが、研究者っぽい固さがなく、訳者自体が「西鶴大好き!」な雰囲気が強く伝わる。
巻頭の西鶴文学の概論、巻末の当時の経済環境についての解説もおもしろく、かつ重宝。
話は基本的に「貧乏人が知恵でお金持ちになった話」「お金持ちが放蕩の末に貧乏人になった話」「お金持ちが工夫と心がけでさらにお金持ちになる話」の3種類。
放蕩の最たる例に、「太夫(最高級の娼婦)を正月の3が日囲う」というのがしばしば登場する。
また身分にそぐわぬ浪費の例に、女性の衣服への濫費が例示されており、
「堅気の女性が水商売の女性を格好を真似て、着飾るのがはやっているが、商売の女性は頭の先から爪の先まで神経が行き届いているが、堅気の女性は中途半端だから却って見苦しい」と嘆いているの。
バブル景気の頃、キャリアの女性がホステスのような格好で出勤していたことを思い出させて、興味深い。