学問のすゝめ―現代語訳の紹介 : 現代語訳の本

学問のすゝめ―現代語訳

人気ランキング : 498204位
定価 : ¥ 2,415
販売元 : 文元社
発売日 : 2004-03

価格:¥ 2,415
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オススメ度

福澤の文章は読んでいてリズムもよく小気味よいものなので、それが味わえないのは残念ではあるが、現代語訳なのでさすがに読みやすい。ただし、今(2006年)から見ても、三十年ほど前の訳業なので、「読みにくい」と思われる部分もある。文庫本という体裁上(もともとは現代教養文庫に収められていたものを復刊したもの)、語注は少なく、学術的な注は皆無である(その点については、最初旺文社文庫、現在は講談社学術文庫に収められている訳者の丁寧な校注本に当たる必要がある)。
また、現代語訳としては三笠書房で出版された檜谷昭彦のものもあるが、福澤研究者だった伊藤正雄の本書の方が信頼性が高い(原著は檜谷訳が1983年、伊藤訳が1977年)。とりわけ、解説についてはその差が大きく、参考文献まで付記された本書は非常に有用である。

書誌に関しては以上にして、内容について述べることにする。
散見される進歩史観はそのまま適用できるものではないし、「政府批判は言論をもってすべきで、暴力によってはいけない」という主張は、あまりにも穏当すぎると批判されるかも知れない。
しかし、それらを補ってあまりある、鋭い文章が随所に見られる。例えば、十一編において、名分論を否定した後で、職分まで否定してはならないと述べ、「兵隊が政治を議論して、勝手に戦争をはじめたり、文官が武力に押されて、軍人の命令に従ったりするようなことがあれば、それこそ国家の秩序は保てまい」と、その後の日本を予期するかのような一文がある。また、十五編「事物を疑って取捨を断ずる事」では、過度の西洋崇拝(とその裏返しの日本蔑視)が、理に基づくのではなく、現実の強者であるという事実に拠ったファッションに過ぎないことを見抜き、善し悪しを見極めて正しいものを選択すべきであると説く。
大正から昭和初期にかけて、自由主義が十分に咀嚼されぬまま、欧米の流行を取り入れることで、マルクス主義、ファシズムによって押しつぶされた日本の歴史を思うとき、実に鋭い分析だったことがわかるだろう。しかもこれは、過去の問題ではない。80年代以降の、ニュー・アカとポスト=モダンの流行、フランス思想に踊らされた浮薄なニーチェ解釈など現在も大して変わっていないのだ。

こうした根本的な批判と分析が福澤に存在したということを誇りに思う反面、それが実を結ばなかったことに暗澹たる思いとなる。

本書を読み終えたら、次は丸山眞男の『「文明論之概略」を読む』』片手に、『文明論之概略』にチャレンジしてみるのもいいだろう。

文明論之概略』に比べると物足りない点があるので、星四つとした。


このページの情報は
2006年12月25日16時43分
時点のものです。

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