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どの話も突飛な展開をするのだが、登場するものはみな俗世間の考えで行動をする。そのギャップがどれも軽妙なユーモアを感じさせる短編集である。
著者はイタリアの児童文学作家。国際アンデルセン賞も受賞しているそうであるが、作品は初めて読んだ。毎日の生活に疲れてしまったとき、ちょっと口直しに味わうと良いような、辛さも苦さもあるが、重たく残りはしない上質の口どけの作品である。
たまたま手にとって、表題作「猫とともに去りぬ」の設定がユアグローの「鯉」(「ケータイ・ストーリーズ:収録)と同じ設定だな、どう違うのかな、と思って読んでみた。こちらはローマ廃墟の猫になってしまうおじいさんの話であるが、あちらは鯉。こんな風に考えることは結構ある、ということなのだろう。ここではなかなか楽しい展開になっている。
他には白雪姫を題材にした作品もある。シンデレラはSF仕立てになっている。イタリアらしく、ヴェネツィアの水没や、ピサの斜塔を扱った作品がある。いろいろあって楽しい。最後に納められている作品が運命や友情の無情観をひんやりとした後口として残すのも、一冊のまとめ方としてなかなか洒落ている。
ひとときの上質なくつろぎとしてはなかなかお買い得な一冊だと思う。
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子供の頃、テレビで見ていた「まんが日本昔話」を思い出した。
理屈とか、必然性とかにとらわれない展開は、まさに「おとぎばなし」のものだ。
残念ながら、自分にイタリアについての知識が乏しいので、
固有名詞などを知っていたら、おそらくさらに楽しめたのだろう。
解説の文章が非常に良かった。
この「古典新訳文庫」シリーズの訳者は、どの方も
作品や作家に深い愛情を抱いておられるようで、この解説にも、それがよく表れている。
ロダーリの『ファンタジーの文法』は筑摩文庫で既刊とのこと。ぜひ読んでみたい。
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日常の言葉で物語が書かれており、すっと体の中に言葉が入ってきました。
物語に味を出すために、品のいいアイロニーがまぶされています。
そして何よりも称賛すべき点は、筆者が子どもたちに全幅の信頼を寄せていることです。
子どもたちに「悪い子」はいない、ということを前提にして、
子どもたちの想像力を尊重しようとする筆者の姿勢に感動しました。
昨今の「最近の子どもは云々」する大人の方々に読んでいただきたいです。
どれだけ大人が描く「理想の子ども像」によって子どもたちの生来の想像力が損なわれ、
彼・彼女の人生が台無しになっているか、と思わざるを得ませんでした。